her/世界でひとつの彼女

her/世界でひとつの彼女」を見たのでメモ書き

 

 ストーリーは予告からした勝手な想像からだいぶ離れていたから「こういう風なところでぐっとくるのでしょう」とあらかじめ想像していたところからはかなり違う着地になった。とは言え、些細ながら何年か恋愛を続けて、結婚してうまく行くことも行かないこともある身としてはやっぱり恋人的な部分や慈しみ合いの部分、個人そのものと相手に取っての自分の間でどうにもならなくなる感じの部分にはぐらぐらした。

 その上、とにかく映画の中の景色や色が好きすぎてたまらない。あと音楽もとてもよかった。感情が大いに乗るのはむしろそういう部分で(演技に暗いせいでももちろんあるけど)、なんだろうなあ、景色や音楽に感動するのじゃなくて、そういうものを見ている人=登場人物に共感するのでもなくて、ストーリーを感じて心が動くところと、景色を見る時の感情とがシンクロするような感覚が何度もあって、その度に私の話だ!と思ってしまうような、そういう感じ。

 

 改めて思うけど、どうして好きな相手には変わらないことを求めちゃうんだろう。私が好きなあなた・あなたの好きな私 というものは時々どうしてこんなに窮屈になるんだろう。

 変わることはどこまで許せるんだろう。許し続けられるんだろう。ずっと好きでいてほしいとか、ずっと好きでいたい・大切にしたい・日々を過ごしたいという部分とどう折り合いを付けていけたらいいんだろう。

 話の中でも「1秒前のあなたと今のあなたは違う」ことを話していたけど、極端に突き詰めればそういうことで、目に見えないレベルで私も相手も変わっていて、そんなのはもうどうしようもないし、みんな最終的には体を止める=死ぬことに向かっていってしまうんだから許すとか許さないとかではないんだろうね。そんなのはどうしようもないんだもん。(そういう意味だと、彼女がああいう決断をしたこともやっぱりかという気もする)

 物質でも肉体でも何でもいいけど、形があるものは形の中で生きている事実がつらいと思った。形があって、形に終わりがあることは限界そのもので、限界のないものは広がっていかざるを得なくて、やっぱり宇宙みたいだ。

  でも、限界があるって知っていてもそんなことを考えていられないことはあるし、というかそんなのはどうでもよくなってしまうことばっかりだ。死ぬってわかって生きている私の人間としての毎日だってそれと一緒だ。正直話を見ながら途中はどう別れるの?と思ってばかりいた。それはどうしてかって、OSがシステムや機械としての寿命を切らしてしまうか、人間が肉体の寿命を切らしてしまうか、どっちが先なの、とか考えていたから。だから、あれでよかったとも思う。残念だけど。別れが選択の結果でよかった。

 

 人間とOSのラブストーリーというところより、無限と限界とか、体を持つ意味とか、手に取ることができることの意味とか、変化への許容とか、そういうことばっかり考えています。そしてそれが人間についてなのか、恋愛についてなのか、生死についてなのかもよくわからない。テーマは決まっててもカテゴリが決まらない、みたいな。

 なので今の所はっきり映画の感想として言えることは、二人が見てた景色はとてもよいものだったし、「写真」もとてもよかった。というくらいです。